単身赴任の街で ２０

スパ銭系（９）

タトゥーくんの「裏話」を聞いてから、円筒形スパ銭のスチームサウナには近づかなくなった。

なるほど、彼の話を聞いた後に見ているとホントによくわかる。今まで何事もなかったことに感謝した。

じゃあ、ブルースパ銭で何かあったのかというとそれもなかった。たまに時間があるときに広いお風呂を楽しみに行くという感じだった。

ある日の午後、仕事で遠出した帰りに汗を流すつもりで久々にブルースパ銭に寄ったときのこと。まだ夕方前でガラガラだった。

何の下心もなく（ホントに）スチームサウナに入り、たっぷり汗をかいて爽やかになろう（ホントに）と何回か出入りしていた。

何回目かに入るとき、俺の後を付けるように入ってくる子がいることに気づいた。

小柄な短髪くん。

俺の向かい側に必ず座る。だいたい５分入って３分外で体冷やしてを繰り返していたが、試しに数分で外に出て、内湯に入ってみた。

こっそり見ていると短髪くんもすぐに外に出てきて、何かを探すような感じでうろうろしている。

俺は確信する。

まさかこんなガラガラな昼間にいるなんてとちょっと驚いた。内湯からゆっくり外に出た俺は短髪くんとばっちり目を合わして、わざとのんびりとスチームサウナに入った。

短髪くんも入ってきた。俺の向かい側に座った。

俺は思いきって誘いをかけてみることにした。

（つづく）


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