単身赴任の街で １４

スパ銭系（３）

21時半ごろ、円筒形スパ銭に入った。

前回は仕事帰りの20時ごろだったけれど、そのときとは雰囲気がちょっと違う。地方の夜は早いからなのか客は減っている。お年寄りはほとんどいない。グルーブで来てる客もいない。

とりあえず露天風呂につかってスチームサウナをしばらく監視することにした。

その気で見ていると確かに行動が不自然な客がいる。ず～～～っとスチームサウナに入ったまま出てこない人と、数分おきに出たり入ったりする人。

ここのスチームサウナは小さいからか、扉を開けるとせっかく籠もった蒸気が一気に外へ出てしまう。長時間中にいてもあまり汗がでてこないからサウナをじっくり楽しむという感じではない。

逆に言うと長時間いても熱くてのぼせることがないんだが。

思い切って中に入ってみた。

薄いグリーンのタオルを首にまいた40歳前後の人が座っていた。

扉を開けてちょうど向かい側に座るまでの数秒間に舐めるように見られた気がする。こういうのは敏感に感じてしまう。

しかしグリーンくんは、そのまま斜め下をじっと見つめているだけ。視線も動かさない。ちょっと不気味だ。

そのうち数分おきに出たり入ったりしていた人が入ってきた。60歳はとっくに越えているだろう。気持ち悪いほどの色白さん。オレンジのタオルが全然似合っていない。

グリーンくんの隣に座った。

３人座るとほとんど満席に近い。新しい客が来たら確実に腿と腿があたってしまいそう。

たまにスチームが音をたてて吹き出してくる。色白さんは「ううっ」とか「ちょっと熱いなあ」とか独り言を言うけれど外へ出て行かない。

時間だけがたっていく。

たまに客が扉を開けてのぞいていくが満席に近いのを見るとあきらめていく。グリーンくんをちらちら見るけれど何の反応もなし。色白さんは何回も足を組み直して意味不明の言葉を出すが…無視。

ここからどうすればいいんだろう。

時間だけが過ぎていった。

（つづく）


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