仮性のヘラクレスくん

日帰り温泉施設のタダ券をもらったので出かけた。

もちろん不埒なことは一切期待せず。というより、家族も一緒なので期待なんてとてもとても。

日曜の昼下がりということで家族連れが多かった。屋外に露天風呂があるのでそこでひと時を過ごす。たまに手足を伸ばして温泉につかるのもいい。

ちょっとウトウトしていると20代の２人組みが入ってきた。

ひとりはつき立ての餅が垂れているようなメタボくん。ところがもうひとりは腹筋ボコボコのヘラクレスくん。少しだけ座り位置をずらして、それとなくヘラクレスくんをじっくり観察。

ふたりの会話の中身から類推するとどこかの大学生らしい。メタボくんはラグビー部っぽい。ヘラクレスくんは陸上っぽい。

ヘラクレスくんが足を組み替えるたびに濁り湯の向こうで揺れる黒い影がちらちら見える。

「こういうのを目の保養って言うんやなあ」と１人で関心する。

しばらくすると突然ガバッと立ち上がって、すぐ目の前にヘラクレスくんの股間出現。思わず声を上げそうになる。

「すいません」と言って股間を隠しもせず露天風呂を出て行くヘラクレスくん。

腹筋ボコボコに似合わず、先っぽがすぼんだ完全仮性だったことを見逃さなかった俺。

「天は二物を与えず」

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