長崎の黒帯くん 1
もう5~6年前になるだろうか。長崎に数週間の長期出張をしたことがある。
朝は早かったが夕方前には終わってしまう作業だったので、夜は比較的時間があった。俺は酒をほとんど飲まないので夕食を簡単に済ませてしまうとやることがない。
ただ疑い深い妻からの「確認メール」と「確認電話」が抜き打ち的にかかってくるので全面的に羽は伸ばせなかった。
それでも滞在1週間を過ぎるとガマンも限度に近くなってきた。
サイトで調べてみるとそんなに遠くないところにハッテンバがあった。「長崎の店ってどんな感じなのか偵察ぐらいに考えよう」と自分に言い聞かせて出掛けてみることにした。
出掛けたのはいいが、迷いに迷う。
ハッテンバといえば雑居ビルの一室だと思い込んでいたから、ビルを探しまくるが全然見つからない。1時間以上探しただろうか。
我ながら根気良かった。やっと見つけた。
それはどこから見ても普通の木造民家だった。
何回もその建物の前を歩いていたのに「ビルだ、ビルだ」と考えていたのできれいに見過ごしていた。建物の中も普通の民家と同じような間取りだった。
そしてそこでしばらくトラウマにとりつかれるような体験をすることになる。
(つづく)
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朝は早かったが夕方前には終わってしまう作業だったので、夜は比較的時間があった。俺は酒をほとんど飲まないので夕食を簡単に済ませてしまうとやることがない。
ただ疑い深い妻からの「確認メール」と「確認電話」が抜き打ち的にかかってくるので全面的に羽は伸ばせなかった。
それでも滞在1週間を過ぎるとガマンも限度に近くなってきた。
サイトで調べてみるとそんなに遠くないところにハッテンバがあった。「長崎の店ってどんな感じなのか偵察ぐらいに考えよう」と自分に言い聞かせて出掛けてみることにした。
出掛けたのはいいが、迷いに迷う。
ハッテンバといえば雑居ビルの一室だと思い込んでいたから、ビルを探しまくるが全然見つからない。1時間以上探しただろうか。
我ながら根気良かった。やっと見つけた。
それはどこから見ても普通の木造民家だった。
何回もその建物の前を歩いていたのに「ビルだ、ビルだ」と考えていたのできれいに見過ごしていた。建物の中も普通の民家と同じような間取りだった。
そしてそこでしばらくトラウマにとりつかれるような体験をすることになる。
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長崎の黒帯くん 2
長崎のハッテンバに突入。
廊下を歩いても階段を上り下りしても、板がきしむ音がする。心なしか床が少し傾いているような気もした。
木造だから仕方ない。床がきしんで傾いているぐらいどうでもいい。
でも人のいる気配がない。
平日の夜に来たのがまずかったか。誰もいなかったらいなかったで休憩室のテレビでも見てボーっと過ごしてもいい。どうせホテルに戻ってもテレビ見てボーっとしてるんやから。
二階に行ってみることにした。薄暗いというか暗い。布団の白い色がかすかに浮かんで見えるだけ。
「やっぱりいないのかな」と思っていると白い色が動いたような気がする。暗闇に目が少し慣れてきた。
よく見ると布団がいくつか膨らんでいる。
何人かいたんだ。ホッとするというより、暗闇の中の布団に潜んでいるであろう人間の存在が不気味なだけだった。
布団をひっぺがして確認するわけにもいかない。俺はそのまま一階に下りて休憩室に入った。
「そのうち二階から様子を見に下りてくるだろう」
すると階段を下りてくる音がした。
(つづく)
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廊下を歩いても階段を上り下りしても、板がきしむ音がする。心なしか床が少し傾いているような気もした。
木造だから仕方ない。床がきしんで傾いているぐらいどうでもいい。
でも人のいる気配がない。
平日の夜に来たのがまずかったか。誰もいなかったらいなかったで休憩室のテレビでも見てボーっと過ごしてもいい。どうせホテルに戻ってもテレビ見てボーっとしてるんやから。
二階に行ってみることにした。薄暗いというか暗い。布団の白い色がかすかに浮かんで見えるだけ。
「やっぱりいないのかな」と思っていると白い色が動いたような気がする。暗闇に目が少し慣れてきた。
よく見ると布団がいくつか膨らんでいる。
何人かいたんだ。ホッとするというより、暗闇の中の布団に潜んでいるであろう人間の存在が不気味なだけだった。
布団をひっぺがして確認するわけにもいかない。俺はそのまま一階に下りて休憩室に入った。
「そのうち二階から様子を見に下りてくるだろう」
すると階段を下りてくる音がした。
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長崎の黒帯くん 3
休憩室をのぞきにきた一人目。白髪交じりの短髪のおじさん。
う~~~ん、おじさんというよりおじいさんの一歩手前と言う感じ。俺よりはるかに年上だ。体格はがっちりしているけれど、首筋のしわとたるみが派手だった。
チラチラと俺の方を見てどこかへ行ってしまった。
のぞきにきた二人目。カッパのような髪の毛をしたおじさん。
う~~~ん、おじさんというよりおじいさん。「こんな年になってもやっぱりハッテンバに来たくなるんやなあ」と感心してしまう。
そのおじいさんは休憩室のソファに座ってしまった。何もせずに座っているだけならOK。
のぞきにきた三人目。俺は見た瞬間、この店の管理人かと思った。完全なおじいさん。
もしかしたら俺の親父よりずっと年上かもしれない。何だかロボットのような歩き方。電車で立っていたら間違いなく席を譲ってしまうだろう。
もしかして俺以外の客はこの3人?????
平均年齢は確実に60歳を越えている。さあどうするんだ。
(つづく)
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のぞきにきた二人目。カッパのような髪の毛をしたおじさん。
う~~~ん、おじさんというよりおじいさん。「こんな年になってもやっぱりハッテンバに来たくなるんやなあ」と感心してしまう。
そのおじいさんは休憩室のソファに座ってしまった。何もせずに座っているだけならOK。
のぞきにきた三人目。俺は見た瞬間、この店の管理人かと思った。完全なおじいさん。
もしかしたら俺の親父よりずっと年上かもしれない。何だかロボットのような歩き方。電車で立っていたら間違いなく席を譲ってしまうだろう。
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平均年齢は確実に60歳を越えている。さあどうするんだ。
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長崎の黒帯くん 4
長崎のハッテンバの夜。
いつの間にか二階にいた3人が俺のいた休憩室に「集合」した。そんなに広くないから居心地が良くない。
「うーーっ」とか「あーーあっ」とか言う独り言を聞きながらこれからどうするか考える。申し訳ないけれど、お三人のいずれの方とも絡む勇気はない。
「まだ入店して30分もたってないんだから新たな客を待つ」
「何か起こらないうちに今すぐ店を出る」
選択肢は二つしかなかった。
数十秒考えた末の俺の結論は「待つ」だった。
休憩室にいてもストレスが溜まるばかり。二階に移動してみる。
布団に寝転ぶ気はせず。部屋の隅に座った。
暗闇の部屋の隅に座って目が慣れてくると薄汚れた壁がボーッと浮かんでくる。「こんなところで俺は何をしてるんやろ」なんてふと感傷にふけっていると、ギギ―ッ、ギギーッと階段の板がきしむ音がする。
だれかが二階に上がってくる音だ。
影が部屋に入ってきた。
そして俺に少しずつ少しずつ近づいてきた。
(つづく)
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「まだ入店して30分もたってないんだから新たな客を待つ」
「何か起こらないうちに今すぐ店を出る」
選択肢は二つしかなかった。
数十秒考えた末の俺の結論は「待つ」だった。
休憩室にいてもストレスが溜まるばかり。二階に移動してみる。
布団に寝転ぶ気はせず。部屋の隅に座った。
暗闇の部屋の隅に座って目が慣れてくると薄汚れた壁がボーッと浮かんでくる。「こんなところで俺は何をしてるんやろ」なんてふと感傷にふけっていると、ギギ―ッ、ギギーッと階段の板がきしむ音がする。
だれかが二階に上がってくる音だ。
影が部屋に入ってきた。
そして俺に少しずつ少しずつ近づいてきた。
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長崎の黒帯くん 5
二階に上がってきた影が俺の少し手前で立ち止まった。
影は「おじいさん一歩手前」さんだった。
暗くてまだ目が慣れていないようだ。そのまま俺にぶつかってくるんじゃないかと心配する。しばらくすると俺の座っていたすぐ隣の布団に潜り込んだ。
「何したいの???」
壁にもたれてボーッと座っている俺と、すぐそばで寝たフリする「おじいさん一歩手前」さん。
奇妙な時間が過ぎていく。
しばらくするとまたギギ―ッ、ギギーッと階段の板がきしむ音がした。
二人目登場か。
影が部屋に入ってきた。「完全なおじいさん」だった。
真っ暗な部屋の中をブラブラしているなと思ったら俺の前に座り込んだ。1メートルほど空けて向かい合う感じ。
不気味だ。
そしてしばらくするとまたまたギギ―ッ、ギギーッと階段の板がきしむ音。
3人目登場。
普通の「おじいさん」だ。
部屋を見回すようにしたあと、布団で寝ている「おじいさん一歩手前」さんと座っている「完全なおじいさん」の間に寝転んだ。
完全に三方向を包囲された俺。
シーーーンとしている真っ暗な部屋。
不気味。
一体俺は何をしてるんだろうと自己嫌悪に陥った。
(つづく)
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暗くてまだ目が慣れていないようだ。そのまま俺にぶつかってくるんじゃないかと心配する。しばらくすると俺の座っていたすぐ隣の布団に潜り込んだ。
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壁にもたれてボーッと座っている俺と、すぐそばで寝たフリする「おじいさん一歩手前」さん。
奇妙な時間が過ぎていく。
しばらくするとまたギギ―ッ、ギギーッと階段の板がきしむ音がした。
二人目登場か。
影が部屋に入ってきた。「完全なおじいさん」だった。
真っ暗な部屋の中をブラブラしているなと思ったら俺の前に座り込んだ。1メートルほど空けて向かい合う感じ。
不気味だ。
そしてしばらくするとまたまたギギ―ッ、ギギーッと階段の板がきしむ音。
3人目登場。
普通の「おじいさん」だ。
部屋を見回すようにしたあと、布団で寝ている「おじいさん一歩手前」さんと座っている「完全なおじいさん」の間に寝転んだ。
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不気味。
一体俺は何をしてるんだろうと自己嫌悪に陥った。
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